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ストーリーの解剖学 ― ハリウッドNo.1スクリプトドクターの脚本講座/創作語録ピックアップ

脚本術・シナリオ入門語録 ピックアップ

シナリオの参考書・入門書などに書かれている脚本術に関することや印象に残った言葉を出典と共にピックアップしています。出典元はプルダウンメニューから選択してください。


ストーリーの解剖学
ハリウッドNo.1スクリプトドクターの脚本講座

ある人生を観客に追体験させる言葉のゲームの作り手として、ストーリーテラーは、ある人物についての謎を創作し、その謎を解きたいと聴き手に思わせるようにする。書き手にとって、この謎の創作方法には大きく分けてふたつある。

ひとつはその架空のキャラクターについて特定の情報を観客に教える方法、もうひとつは特定の情報開示を抑える方法だ。情報を抑える、もしくは隠しておくことは、ストーリーテラーがフィクションを創作するにあたって欠かせないものだ。

これをすることで、観客はそのキャラクターの人となりや行動を自力で理解しなければならなくなり、そのおかげでストーリーに引き込まれてゆく。観客がストーリーを自力で理解しなくてもよくなった時点で、観客は観客ではなくなり、 ストーリーはそこで終わってしまう。

観客はストーリーの感覚部分(ある人生を追体験すること)と思考部分(謎を解くこと)が大好きだ。名作は必ずその両方を備えている。ただし、ストーリーの種類によって、感傷的なメロドラマから知力を要するミステリーまで、感覚面と思考面のどちらかに偏った形式が存在する。

出典:ストーリーの解剖学

キャラクターが欲求を持つと、そのストーリーは2本の脚で歩き始める。願いを果たそうとするキャラクーは求めるものを得るために行動を起こし、そのためのより良い方法を新たな情報として学んでゆく。新たな情報を学ぶ度にその人物は新たな決断を下し、行動の方向性を修正する。

自らの願いを追い、それを妨げられることで、その人物は対立・葛藤する(それがなければそのストーリーは終わりだ)。その対立・葛藤がその人物を変える。ストーリーテラーが目指すのは、人物の変化を描くこと、または、変化が起きなかった場合にその理由を説明することにある。

出典:ストーリーの解剖学

設定原則はストーリーを独創的で効果的なものにするための最重要にして唯一の要素だ。設定原則を見い出し、それを最後まで守り続けること。とにかく設定原則の発見に努め、一度それを見い出したら、その後の長い執筆プロセス中にはその設定原則から絶対に目を離さないこと。

設定原則を見い出すのは難しい。しかも、実は多くのストーリーはこれを持ち合わせてすらいない。そういったストーリーはどれも一般的で平凡だ。そこがプレミスと設定原則の大きな違いとも言える。プレミスはどんなストーリーにもあるが、設定原則は優れたストーリーにしかない。

例)『トッツィー』のプレミス(ログライン)と設定原則

■プレミス:ある俳優が役をもらえなくなり、女性に扮装してテレビ・シリーズの役を得るが、ある共演者の女優に恋をしてしまう。
■設定原則:ある男性偏重主義者を、女性として生きなければならない状況に陥らせる。

出典:ストーリーの解剖学

ストーリーの原動力となる人物が決まったら、次はそのストーリーが本質的に何を描くものなのかを見い出そう。つまり、ストーリーの中心となる葛藤・対立を決めるということだ。それを見い出すため、「誰が何をめぐって誰と戦うのか?」を自問し、その答えを簡潔にまとめよう。

出典:ストーリーの解剖学

物語の中心テーマは、主人公が二者択一を迫られる道徳的決断によって具体化されることが多く、大抵の場合、その決断はストーリーの終盤で下されるものだ。これはあなたの道徳観であり、そもそもあなたがストーリーを書く理由のひとつでもあるはずだ。

決断の2つの選択肢は、可能な限り同等に近いながらもどちらか片方をほんの少しだけ良いものにしよう。どちらもポジティブな2つの選択肢の典型例としては、愛と名誉のどちらをとるかというものがある。『武器よさらば』の主人公は愛を選び『マルタの鷹』の主人公は名誉を選んだ。

出典:ストーリーの解剖学

多くのライターが犯しがちな大きなミスのひとつは、「自分が大いに関心を持っていることを書くべきか、それとも売れるものを書くべきか」という二元論に陥ってしまうことだ。
この2つを区別してしまうのは、「芸術のため貧困に耐えながら安い屋根裏部屋で執筆する」という古風でロマンティックなイメージにとらわれた誤った発想だ。

あなたが今後の人生の中で思い浮かぶことになるアイデアの数は、そのすべてをストーリーとして仕上げることなど絶対に不可能なほどたくさんある。だからこそ、いつでも、あなたが心から関心を持ち、しかも観客にアピールできるものを書くようにしよう。

出典:ストーリーの解剖学

ストーリーの出だしの主人公には、ひとつかそれ以上の弱点があり、その弱点のせいで迷いを持っている。内的にとても大切な何かが欠けていて、そのせいで人生が台無しになっている。
ここで言う「欠陥」とは、より良い人生を送るため、主人公の中に欠けているもの、満たす必要のあるものを指す。大抵の場合、これには弱点を克服して変化することや、成長することが何らかの形で関わってくるはずだ。

出典:ストーリーの解剖学

ライバル、または敵対者。彼らのことを、見た目も喋り方も行いも邪悪なキャラクターだと誤解しているライターは意外と多い。ライバルをそのように捉えてしまうと、優れたストーリーを書くことはできないだろう。

ライバルのことは、ストーリーにおける1つの重要な役割として、むしろ構造的に捉えるべきだ。本当のライバルとは、主人公の欲求の達成を妨げたいと思っているだけでなく、自分も主人公と同じゴールを目指して争っている者のことだ。

出典:ストーリーの解剖学

「自分は何々を学んだ」と真正面から言葉にして主人公に言わせたりしないこと。見え透いている上に、説教臭く響き、観客に顔をそむけられてしまうだろう。そうではなく、その自己発見へと繋がる主人公の一連の行動を使って、主人公の自己洞察を提示したい。

出典:ストーリーの解剖学

まずはストーリーの終わりから取り組み始め、次に出だしに戻るという方法論は、キャラクターやプロットやテーマに取り組む際に繰り返し使われる手法だ。こうすることで、主人公もストーリーも構造上の旅路における真の最終地点である自己発見に向かって進むことが確保される。

出典:ストーリーの解剖学

素晴らしいキャラクターを生み出したいのなら、ストーリーに登場するキャラクター全員が他のキャラクターを定義するのに役立っているという発想から入ろう。別の言い方をするなら、キャラクターというものは、本人以外の人物から定義されるものである、ということだ。

出典:ストーリーの解剖学

本当に大切なことは、観客がその人物を理解できるかどうかであり、必ずしもその人物のすることすべてに好感を持てなければならないというわけではない。

出典:ストーリーの解剖学

主人公のことを、しっかりできあがった確固たる人物と捉えてストーリーを語ろうとしないこと。つまり、執筆プロセスの開始時に主人公の変化域を決めておかなければならないということ。それをしなければストーリーの終わりに主人公が変化することは不可能だ。

変化域が小さければ小さいほどストーリーはつまらなくなる。変化域が大きければ大きいほどストーリーはより面白くなるが、同時にリスクも大きくなる。なぜなら、ストーリーで描かれる限りある時間の中で、人は実際にそれほど変われるものではないからだ。

出典:ストーリーの解剖学

主人公を定義するためのコツ、ストーリーを理解するためのコツは、ライバルを理解することだ。最も重要な繋がりである主人公とメインのライバルの関係性によって、全体のドラマ性の組み立て方が決まってくる。

ライバルは書き手であるあなたに様々な形で貢献してくれる者なのだから、あなたはこのキャラクターを心から愛するべきだ。主人公はライバルを通して学び、成長するのだから、ストーリー構造上のカギを握っているのは常にライバルだということになる。

優れたストーリーでは、ライバルの価値基準が主人公の価値基準と対立しているものだ。その対立を通して、観客はどちらの生き方が優れているのかを見る。そういう意味でもストーリーの力強さの殆どは、ライバルのクオリティにかかっていると言えるだろう。

ライバルが生まれながらに邪悪だと単なる悪者になり、機械的で面白味のないものになりがちだ。現実の世界では善と悪や正解と不正解に明確に割り切れる対立は殆どない。優れた書き手はライバルの道徳観を詳細に描き、説得力がありながらも究極的には間違った道徳論議を提出する。

主人公とライバルに一定の類似性を持たせることで、主人公が完璧に善良になりすぎたり、ライバルが徹底的に邪悪になりすぎたりすることを回避できる。主人公とライバルを究極の正反対として扱ってはならない。むしろこの2人は同域内に存在する2種類の可能性として捉えるべきだ。主人公とライバルが繰り広げる論議は、明確な善と悪の論議ではなく、弱点と欠陥を抱える2人のキャラクター間の論議なのだ。

出典:ストーリーの解剖学

ライバルが機能して主人公を突き動かしている教科書的な例は『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターだ。皮肉なことにこの映画ではレクターは真のライバルではない。彼は一見するとクラリスのライバルに見えるが実は最高の味方であり、いわゆる「ライバルのふりをした仲間」だ。

私は『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターのことを「地獄版ヨーダ」と捉えている。彼がクラリスに与えたトレーニングは、確かに残酷なものではあるものの、彼女がFBIアカデミーで学んだどんなトレーニングよりもずっと価値あるものだった。

出典:ストーリーの解剖学

平凡なライターは、ストーリー形式の如何を問わず、自身の道徳観を会話のみを通して語ろうとするので、「道徳論議」がストーリーを凌駕してしまう。

書き手の発想の代弁者のようにしか聞こえない主人公を創作するべきではない。優れたライターたちは、主にストーリー構造を通して、また特定のシチュエーションにおける主人公の対応の仕方を使って、自身の道徳観をゆっくりと繊細に表現している。

出典:ストーリーの解剖学

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